
前編では、赤ちゃんが自らママを選んでやってくること、そして流産という体験に込められた赤ちゃんの深い愛について産婦人科医の池川明さんにお話を伺いました。
「命の誕生はすべて祝福である」というその視点に、心が軽くなった方も少なくないのではないでしょうか。
後編でお届けするのは、その奇跡の出会いの先にある「子育て」と「親子の絆」の話です。
胎内記憶を持った子どもたちは「お母さんを笑顔にするために生まれてきた」と、口をそろえて言います。
池川さんによれば、親を怒らせてしまう行動でさえ、実は子どもなりの愛の表れなのだとか。
子どもに怒ってしまうたびに自分を責めてきたママにとって、胎内記憶の視点は大きな気づきをもたらしてくれるはずです。
池川さんが子育てのゴールとして掲げるのは、高い偏差値の獲得でも有名校合格でもなく、「30歳で自立して、楽しく暮らせる人間に育てること」です。この言葉の背景には、子どもの魂が持つ本来の力への、深い信頼がありました。
7歳までの子どもが持つ特別な感覚、兄弟喧嘩に隠された意外な秘密、夫婦が互いを癒やし合うためのヒント。この後編では、日常の育児が「宝探し」に変わるきっかけが、きっと見つかるはずです。
お母さんが怒ることを、子どもは望んでいる
香織:胎内記憶を持つ子どもたちは、よく「お母さんを幸せにするために来た」と語るそうですね。
池川:そうなんです。実は、ママが自分らしく生きていなかったり、人の顔色ばかり伺っていたりすると、子どもはその状態を敏感に察知するんです。「ママ、笑って」とおどもが言ってくるとき、単純に「笑顔になってほしい」ということだけじゃなくて、「お母さん、自分らしく生きていいんだよ」というサインでもあるんです。
香織:子どもが自分を映す鏡になっている、ということですね。お母さん自身が笑顔でいることは、すなわち子どもが自分の気持ちを素直に出せることに繋がりますよね。
池川:それが子育ての土台になってくるんですよ。だから、ママも腹が立ったら怒っていいんですよ。
香織:「怒っちゃダメ」と我慢しなくていいんですね(笑)
池川:そもそも怒りが生まれる背景を知っておくと、怒り方が全然変わってくるんですね。人の顔色を伺いっていたり、日常的に言いたいことを言えずにいると心の中にモヤモヤした黒い雲がどんどん溜まっていくでしょう? 子どもにはそれが見えるらしくて、「重い蓋が閉まっていて、お母さんが苦しそう」と感じているんですって。
香織:敏感に察するんですね。しかも黒い蓋って、イメージまで伝わっていくのは驚きです。
池川:だから子どもは、わざと怒られるようなことをしてママに言いたいことを言わせようとする。お母さんが怒ってモヤモヤを吐き出すと、その蓋がパカッと開いて心が解放される。それを見て子どもは「あ、よかった」と笑っているんです。これも実際に聞いた、小学生の男の子の話です。
香織:子どもが意図的にやっているなんて……! でも、怒ることでその子の心に傷をつけないか心配になりますね。
池川:そこがポイントでしてね。ママに「ちゃんと人の話聞いてんの⁉」って怒られた子に、「ああいう風に怒ってるけど、君はどうするの?」と聞いてみたんです。すると「大丈夫、ママの感情はスルーしてるから気にならない」ですって(笑)
香織:それはたくましい! 雑音として耳に入れないなんて、なかなかのコミュニケーションテクニックですよね(笑)
池川:何度もそうやってママを怒らせていくうちに、今度は子どもが愛の光をお母さんの心に送り込んでいくらしいんです。そうするとだんだんママのモヤモヤが光に置き換わっていく。ある子は小学校4年生の頃にお母さんの心が光でいっぱいにできたから、もう怒らせなくて済むようになったと言っていました。
香織:池川さんはよく「怒らせてくれてありがとう」という言葉を大切にされていますよね。それには、そういう背景があったんですね。
池川:子どもの存在を丸ごと受け入れた上で怒るのと、受け入れずに怒るのとでは、子どもにとっての意味がまったく違うんです。子どもはお母さんのために来ている。それだけわかっていれば、怒り方が自ずと変わってくる。「あなたのせいで私は怒っているんだ」じゃなくて、「怒りたいから、怒らせてくれてありがとう」という気持ちで怒れるようになる。
香織:それを知っているだけで、怒った後の気持ちが変わりそうですね。
池川:そうなんですよ。怒った後に「怒らせてくれてありがとう、スッキリしたわ」と言えたら、子どもは「やっとわかってくれた」と心の中では喜ぶんです。その子どもの健気さに、ぜひ気づいてほしいんです。ただ、怒りの矛先を子どもに向けて、攻撃的になるのだけは避けたいですね。怒りの感情を見せることと、攻撃することはまるで違いますから。

30歳で自立して、楽しく暮らせる人間に育てること
香織:子どもの健気さを知ると、子育てへの向き合い方がずいぶん変わってきそうですね。先生が考える、子育てや教育の本当の「ゴール」とは何でしょうか。
池川:以前、あるお坊さんに「いい教育ってどういうものだと思う?」と聞かれたことがあったんです。私は「やはり偏差値が高くていい学校に入ることじゃないですか」と答えたら、一喝されましてね。そのお坊さんが言うには、「きちんと笑顔で挨拶ができれば、どこでも仕事ができるし、雇ってもらえる」と。では目標は何かと聞いたら「30歳になったときに、自分で自分の行き先を決めて、楽しく暮らしている人間になっていれば、どんな教育でもいい教育だ」と帰ってきたんです。
香織:確かに…! ひとつの真理だと思います。自分らしく生きられていることが大事ということですね。
池川:その言葉を聞いてお産と教育が一本につながった気がして。「いいお産」というのは、30歳になったときに自分で考えて行動できる、幸せな人間を生み出すことだと考えると、「帝王切開がいいとか悪いとか」「母乳じゃないとダメとか」、そういうこだわりにはあまり意味がないと思えてきたんです。
香織:確かに、20歳や30歳になった成人を見て、「この人は母乳育ちだな」とか「帝王切開で生まれたんだろうな」などとはわからないですよね。小学生の段階ですらもうわからないかもしれません。
池川:つまり、お産のやり方よりも、その後どんな親がそこにいるかのほうが、はるかに子どもの人生に影響を与えるんですよ。実は、お腹の中にいるときから親が話しかけながら育てた子どもたちの、20年後を調べたことがあるんです。すると、驚くべき共通点がわかったんですね。
香織:興味深いリサーチですいね。どんな共通点なんでしょう?
池川:全員、口をそろえて「私たちは、いま、やりたいことをやれています」というんです。全員ですよ。表情を聞くと全員笑顔で朗らか。友達関係を聞くと仲良しがたくさんいて、リーダー格になっている子がほとんど。みんなが頼ってくるんですって。さらに「困っている人がいたら?」と聞くと、全員が「とことん助ける」と断言するんです。やりたいことをやって、笑顔で、友達がいて、人に優しい。この4つが全員揃っていたんです。
香織:これって…まさに親が子どもに望む姿そのものじゃないですか!
池川:そうでしょう? 思い返せば、この事実は「幸せの基準」とも呼べますよね。その「幸せの基準」を子どもの頃から育てていくことが、本当の意味での教育なんじゃないかと思っています。

7歳までに、子どもは神様と繋がっている
香織:やりたいことをやって、笑顔で、人に優しい。そんな子どもに育てるために、日々の家庭の中でできることって、何かありますか。
池川:案外身近なところにヒントがあるんですよ。たとえば兄弟げんかひとつとっても、そこには大切な意味が隠されていて。
香織:うちも姉妹げんかが多くて、つい口出ししてしまうんです(苦)
池川:兄弟げんかって、実は仲がいい証拠なんですよ。夫婦喧嘩するほど仲がいいというのと同じですね。親しいからこそけんかできる。男の子と女の子の2人を育てている知人のママに聞いたことがあるんです。その2人はしょっちゅうけんかばかりして、ある日、とうとうママの堪忍袋の緒が切れた。「いい加減にしてちょうだい!」と言ったら、お兄ちゃんが千円札を持ってきて、「僕たちはね、けんかするために生まれてきたんだ。仲良くけんかしてるんだから、ママがイライラしてるのはちょっと嬉しくないんだよね。ラーメンでも食べて気持ちを冷やしてきて」と言ったそうで。
香織:あはははは、傑作のエピソードですね! 子どもにそんなことを言われたら、もう何も言えません(笑) ラーメン食べに行くしかなくなっちゃう。
池川:でしょう(笑) 子どもは自分たちで解決するんですよ。親が口を出すと、どうしてもどちらかの肩を持つことになる。そして大体の場合、お姉ちゃんが悪者にされてしまう。「お姉ちゃんだからしっかりしなさい」と。
香織:長女はそれで我慢を覚えていくんですね。
池川:長女って、お母さんの顔色を伺いながら「いい子」を演じている子が多いんですよ。次女や三女は上を見ながら器用に立ち回れるんですが、長女だけは誰も前を歩いていない雪道をラッセルして進むようなもので、本当に生きづらい。あるとき下の女の子が「悪い子でも可愛がってね」という歌詞の歌を歌っていて、意味を聞いたら、「お姉ちゃんはやりたいこともやらずにいい子のフリをしていて、私よりずっと生きづらいんだよ」と言うんですよ。下の子がそこまでお姉ちゃんのことを見ていたんですね。

子どもは、家族の因果を解くために生まれてくる
香織:兄弟げんかの話にせよ、その長女の子の話にせよ、子どものほうが、いわば神様のような視点で「魂の様子」を観察できていると言えるかもしれませんね。何歳くらいまでそういう感覚が続くものなんでしょうか。
池川:7歳頃が境目です。子どもの脳波は成長とともに変化していて、胎児のときはデルタ波、1〜2歳はシータ波が中心で、3〜4歳にかけてだんだんアルファ波やベータ波が増えてくる。そして7歳頃に、子ども特有の神様を感じられる直感的な脳波から、大人と同じ脳波に切り替わってしまうんです。
香織:小学校1~2年生の時期までですか。
池川:その時期の子どもに「あなたの神様は何て言っている?」と聞くと、大人以上に正しい答えを出してくることがあります。たとえば友達を殴ってしまったとき、「やっていいか悪いかは、あなたの神様に聞いてみて」と言うと、ちゃんと「やっちゃいけない」とわかっているんです。さらに「じゃあ他に方法はなかった?」と問うと、いくつも代替案を出していけるんです。
香織:理屈や禁止ではなく、自分の内側に聞く力を育てるということですね。
池川:そうです。でも今の教育は、右脳が全開に開いている子どもに対して左脳ばかり使わせようとする。「これはダメ、あれはダメ」という恐怖や不安のノイズが、神様との回線を断ってしまう。そうなると「ママだけが正しい」という基準になってしまうんです。親にとっては「いい子」でも、自分を出せない生きづらい大人になってしまうことがあるわけなんですね。7歳までに自分の内側に聞く力を育てておけば、大人になってもその直感は使えます。ぜひ今のうちに、「あなたの神様は何て言ってる?」と聞いてみてください。
香織:今回の対談では、「子どもは親を幸せにするために来る」という大きなテーマのもと、お話を伺ってきました。もう少し大きな視点で見ると、家族というのはどういうものだとお考えですか。
池川:まず夫婦から見ていくと、夫婦というのは、お互いに真逆の人間が一緒になっているケースがほとんどなんですよ。できないところを言い合うんじゃなくて、できるところをお互いに持ち寄ればいい。そしてその夫婦に足りていないところを、子どもが埋めてくれるんです。4人子どもがいる家なら、4つ欠けていたところをそれぞれの子どもが補って、家族としてひとつの完成形になる。
香織:家族はチームなんですね。
池川:そうです。笑顔になれないお母さんがいたとして、なぜ笑顔になれないかというと、そのお母さんの両親も笑顔がなかった。さらにそのまた親も。代々連鎖しているわけです。「○○家の呪い」みたいなものですね(笑)。
香織:呪い(笑) でも、心当たりがある方は多そうですね。
池川:子どもはその呪いのような因果を解こうとして生まれてくるんです。自分が幸せになれば、過去3代だけでなく未来3代、自分を入れて7代が幸せになると言われています。でもみんなその使命を知らないまま、うまくいかずに終わってしまうことが多い。だからこそ、お産や子育てがそれほど大切なんです。
香織:子どもを授かるということは、そこまで深い意味があることだったんですね。
池川:子どもを「思い通りに動かすもの」と見るか、自分を癒やし気づきを与えてくれるパートナーと見るかで、子育ての景色がまったく変わってきます。子どもはお母さんの心に少しずつ愛の光を入れて、モヤモヤを光で置き換えていく。子育てというのは、親が育てられている時間でもありますからね。
香織:本当に、とても深いお話をありがとうございました!
※
子どもたちは「お母さんを笑顔にする」という健気な決意を持って、この世にやってきます。
時に親を激しく怒らせることがあっても、それさえも親の心のモヤモヤを解放するための手助けです。怒ってしまった後は、「怒らせてくれてありがとう」と伝えてみてください。その一言で、親子関係の景色はきっと変わります。
教育のゴールを「30歳で自立し、楽しく暮らせる人間になること」に据えるならば、学歴や周囲の評価に振り回される必要はありません。やりたいことをやらせるのは何歳からか——その答えは、常に「今」にあります。
特に7歳までは、子どもが自らの内なる声に問い、善悪を導き出す力を持っている特別な時期です。「お父さんとお母さんの子だから絶対に大丈夫」という言葉を繰り返し伝えてあげてください。その言葉は一生の糧となり、どんな困難があっても「自分は幸せになれる」という揺るぎない土台を子どもの中に築いていきます。
子どもは親が思い通りに動かす対象ではなく、親の欠けた部分を埋め、共に成長し、癒やしを与えてくれる最高のパートナーです。そんな視点を持つだけで、日々の子育ては「宝探し」へと変わっていくのかもしれません。

【プロフィール】
池川明(いけがわ あきら)
産婦人科医・医学博士。1989年に横浜市に池川クリニックを開設し、28年間で約2,700件の出産に携わる。胎内記憶研究の第一人者として、数多くの論文・書籍の執筆やメディア出演を通じて、その普及に努めてきた。ドキュメンタリー映画『かみさまとのやくそく』(2016年/監督:荻久保則男/製作著作:株式会社熊猫堂)では主演を務め、観客動員数は31万人にのぼる。現在は胎内記憶を世界に広める活動に専念し、不妊や流産に悩むママたちへの温かなメッセージを届け続けることで、多くの女性の心の支えとなっている。著書に『子どもは親を選んで生まれてくる』(日本教文社)など多数。
伊東香織(いとう かおり)
株式会社TIGER 専務取締役。創業35年以上のルイボスティー専門メーカーにて、商品の企画開発・広報を担当。自身の不妊治療、4人の子育ての経験に基づき、「妊娠中も、子育て中も。ママの暮らしに寄り添う」をコンセプトに、女性の心と体に寄り添う製品づくりと情報発信を積極的に行う。
FAQ
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子どもがわざと怒らせるようなことをするのはなぜですか?
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お母さんが言いたいことを我慢して心にモヤモヤを溜めている時、子どもはあえて怒らせることでその「蓋」を開け、感情を解放させようとすることがあります。怒ることでお母さんの心がスッキリするのを、子どもは喜んでいる場合があるのです。
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池川明さんが考える「教育のゴール」とはどこにありますか?
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偏差値や学歴ではなく、「30歳になった時に自分で自分の行き先を決め、楽しく暮らしている人間」に育てることをゴールとしています。その自立心と笑顔でいられる力こそが、幸せな人生を送るために最も必要な力だと池川さんは提唱なさっています。
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兄弟喧嘩に親はどう向き合えばよいでしょうか?
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兄弟喧嘩は「仲良く喧嘩している」状態であり、基本的には介入せずに放っておくのが一番です。子どもたち自身で解決する力を信じ、親は「お姉ちゃんだから」といった役割を押し付けず、それぞれの個性を尊重して見守ることが大切です。











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