数値より大切なのは今日のあなた――基礎体温・睡眠・気分を記録する「セルフトラッキング」が妊活中の心に与える影響

妊活中に「基礎体温や体調を確認する回数」が無意識に増えていませんか?

妊活に一生懸命向き合っている方の中で、ある時期から、無意識のうちに「確認」という行動が増えていくケースが見られます。

例えば、朝に測ったばかりの基礎体温(妊活中の重要な指標)を、昼休みや寝る前にもう一度見返してしまう。

スマホを開くたびに生理周期・排卵日を管理するアプリをタップし、排卵日や生理予定日を何度も確認してしまう。

「昨日のあの体調の変化は何だったんだろう?」と、過去の体調の変化に理由をつけようと妊活に関する検索を繰り返す。

こうした「何度も記録を見ないと気が済まない」という行動は、自覚がないまま習慣化していることが少なくありません。

実は「過剰に確認する」という行動そのものが、妊活中に生じやすい心の不安の現れだと考えられています。自分では「不安でたまらない」という自覚がなくても、です。

妊活は、食事や生活習慣にどれだけ気を配っても、望む結果がいつ手に入るか誰にも分からない「コントロールできない領域」が多い活動です。

私たちの脳は、こうした「先が見えない状態」が長く続くと、少しでも安心を得るために、数字やデータといった「自分で把握・コントロールできそうなもの」に執着し始めると考えられています。

つまり、何度もアプリを見返すのは、情報を得たいからではなく、「目に見える数字を確認することで、一時的な安心感を得たい」という妊活中の心を守るための防衛本能だとも言えるでしょう。

記録を「評価」に使い始めた瞬間、心が苦しくなる

本来、基礎体温や体調の記録には、実務的なメリットがあります。

・自分の体のリズム(排卵周期など)を把握できる
・体調の変化に早く気づき、自分をいたわれる
・病院を受診した際、医師に正確な状況を伝えられる

しかし、一生懸命になりすぎると、この記録の役割がいつの間にかすり替わってしまいます。

自分の体を慈しむための「支え」だったはずのデータが、いつの間にか「自分を判定し、一喜一憂させる妊活中の心を追い詰める基準」へと変わってしまうのです。

過剰な記録の確認は、一時的な安心をくれる一方で、期待外れの数値を見たときにはさらなる不安を加速させるという「落とし穴」になってしまうわけですね。

記録に振り回されるようになると、妊活中の心は休まる暇がありません。

大切なのは、記録を「自分を評価する試験の結果」としてではなく、あくまで「今の自分を知るためのヒント」として捉え直すことです。

この記事では、記録(セルフトラッキング)を、不安を煽る材料ではなく「妊活中の心と体を整えるための優しい支え」にするための視点をお伝えしていきます。

なぜ不安が増えるのか? 妊活中の記録が「評価」に変わるとき

妊活中に不安が膨らんでいく一番の理由は、「不確実な状態がずっと続くこと」だと言われています。

妊娠の結果が見えない状態という不確定要素が、妊娠を望むママの心に負荷をかけているのです。

「努力が報われる保証がない状態」に置かれると、人は無意識のうちに「これで大丈夫だ」という確かな証拠、つまり「正解」を探し始めてしまいます。

「今日の体温が上がったのは、いい兆候かな?」
「昨日よく眠れなかったのは、ストレスのせいだろうか」
「少しイライラしたのは、ホルモンバランスのせい?」

これらはすべて、自分を納得させ、少しでも安心したいという切実な思いからくる思考と言えます。

決して、「神経質すぎる」わけでも「考えすぎ」なわけでもなかったのです。

安心したくて始めた記録が、不安を増やしてしまう理由

ただし、「正解探し」をするときには、少し注意が必要でもあります。

記録が「今のありのままの状態を知るためのもの」ではなく、「未来を無理に予測し、判断するための材料」になってしまわないように気を付けることが大事です。

「今日は体温がガクッと下がった。だから、今月もきっとダメなんだ」
「昨日あまり眠れなかった。だから、体に悪い影響が出てしまうかもしれない」

このように、ひとつひとつのデータに「良し悪し」のラベルを貼り、過度な意味を背負わせてしまうと、記録を見るたびに一喜一憂し、心が激しく揺れ動くようになります。

本来は安心するために始めたはずの記録が、いつの間にか自分を追い詰め、不安を増幅させてしまう……。

この「安心のための道具が、不安の種になる」という逆転現象は、一生懸命なときほど、自分ではなかなか気づきにくいものなのです。

セルフトラッキングは「判断」ではなく「妊活中の生活を整えるための調整」のためにある

もし、記録をつけることが少し苦しいと感じるなら、一度、セルフトラッキングの役割をグッと軽くしてみませんか。

基礎体温は、あなたが妊娠できるかどうかをジャッジするためのテストではありません。

気分の記録も、その日が良い日だったか悪い日だったかを決める審判ではありません。

睡眠の記録も、「もっと早く寝なきゃダメだ」と自分を反省させるための道具ではありません。

これらはすべて、今の自分を責めるためではなく、「今日という一日を、自分らしくどう過ごすか」を前向きに考えるためのヒントにすぎないのです。

記録は「良し悪しを決めるもの」ではなく、行動を整えるためのもの

ここで記録を「判断」から「調整」へと変えるための、シンプルな考え方をご紹介しましょう。

「今日は体温が少し不安定だな。だから、今日は無理な予定を入れずにゆったり過ごそう」
「今日はちょっと気分が沈みやすいみたい。だから、好きな飲み物を飲んで早めに自分を甘やかそう」
「あまりぐっすり眠れなかったな。だから、午後は15分だけお昼寝をしてみよう」

このように、記録を「自分の行動をポジティブに調整する」ために使ってみてください。

・記録を、未来を当てるための占い道具にしない。
・自分に合格や不合格を出す基準にしない。

そう心に決めるだけで、セルフトラッキングという作業は、あなたを支える心強い作業に代わっていくはずですよ。

不安を増やさないセルフトラッキングの実践方法

ではさっそく妊活中でも続けやすい実践方法に移っていきましょう。

質問です。基礎体温を記録するうえで最も大切なのは何でしょうか?

それは、正確な数値そのものよりも、測る時の条件を一定にすることです。

基本は「目が覚めてすぐ、体を動かす前に測る」こと。たとえ毎日同じ時刻でなくても、「起きてすぐ」という条件さえ守れていれば十分です。

また、数値と一緒に「昨日はお酒を飲んだ」「夜中に何度も目が覚めた」「口を開けて寝ていたかも」といった一言メモを添えておきましょう。

そうすることで、後で見返した時に「体温が揺れているのは、このせいかな」と、客観的かつ冷静に振り返ることができます。

数値に振り回されないための、ちょっとしたコツです。

気分と睡眠は、決して「評価」せずに残すのがポイント

さて、日々の気分や睡眠の記録については、どのように記録していくのが理想でしょうか?

まず日々の気分については、「晴れ・曇り・雨」のようなお天気マークや、5段階評価などの簡単な目安だけで十分です。

なぜその気分になったのかという細かい理由や、「もっと前向きにならなきゃ」といった反省を書く必要はありません。

実は睡眠も考え方は同じです。「何時に寝て、何時に起きたか。途中で目が覚めたか」。ただそれだけで完璧です。

繰り返しますが、一番大切なのは、記録に「良かった」「悪かった」という評価を書き込まないこと。

「今日はこうだった」という事実だけを淡々と残すことで、記録はあなたを守る材料になってくれるはずです

セルフトラッキングは、意味づけ次第で味方にも負担にもなる

妊活中に「確認する回数」が増えてしまうのは、あなたに何かが足りないからでも、あなたが弱いからでもありません。

それほどまでに、あなたが自分の将来や、新しい家族との出会いに真剣に向き合っているからこそ、自然に現れている「誠実さ」の表れだと言えるでしょう。

だから、セルフトラッキングをやめる必要はないのです。ただ、記録に持たせている「役割」を、少しだけ変えてあげてください。

セルフトラッキングは、正しい視点で付き合えば、妊活中の不安を抱えながらも前に進むための、とても心強い味方になってくれるはずです。

今日は、記録を見返してため息をつく代わりに、「今日もよく頑張っているね」と、自分自身に声をかけてあげてくださいね。

Q&A

Q1.妊活中に基礎体温や周期管理アプリを何度も確認してしまうのは、よくあることですか?

とてもよくあることです。妊活は、どれだけ努力しても結果がいつ出るか分からないため、不安を感じやすい状態が続きます。その中で、人は少しでも安心材料を探そうとし、基礎体温や周期管理アプリといった「目に見える数値」を何度も確認する傾向があります。これは神経質だからでも、気にしすぎだからでもありません。先が見えない状況の中で心のバランスを保とうとする、ごく自然な反応だと言えます。

Q2.基礎体温・睡眠・気分の記録は、どこまで気にするべきなのでしょうか?

数値を正確に追いかけることよりも、体調の傾向に気づくための目安として捉えることが大切です。基礎体温や睡眠、気分の記録は、妊娠できるかどうかを判断したり、その日の良し悪しを決めたりするためのものではありません。数値に一喜一憂するよりも、「最近少し疲れやすいかも」「この時期は気分が揺れやすい」といった流れをつかむことを目的にすると、記録が負担になりにくくなります。

Q3.記録をつけることで、かえって不安が増えてしまう場合はどう向き合えばよいですか?

記録を「評価」ではなく「調整」のために使う意識を持つことが重要です。数値や状態に意味を持たせすぎると、「数値が下がったからダメ」「眠れなかったから悪影響があるかも」と、未来を決めつけてしまいがちになります。そうではなく、「今日は体温が不安定だから予定を軽くしよう」「気分が落ちやすいから早めに休もう」と、行動を整える材料として使ってみてくださいね。

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